RESULT REPORT
2023年 第7回現代芸術助成鄭裕憬
「大村焼」の作品および展覧会の制作
-
チョン・ユギョン Jong YuGyong
1991年兵庫県出身 2014年朝鮮大学校美術科卒業
2017年からソウルを拠点にしていたが、韓国の法律が変わり徴兵対象となったため、2020年末に日本に帰国。以降は福岡に移住し作家活動をしている。作品では「朝鮮人」の移動の歴史を検証することで、恣意的に引かれる「境界線」や戦争と文化の関係に対して問いかけていくことを目指しており、近年は有田焼や大村収容所の歴史を調査しながら作品発表をしている。
個展
2024 大村焼, まちのオフィス春陽堂&AGITO, 佐賀
2021 After Potemkin Villages, art space tetra, 福岡
2014 JUCHE POP, CHODEMI, 東京
グループ展
2023 福岡現代作家ファイル, 旧母里太兵衛邸長屋門, 福岡
2023 Homemaking #2, 武蔵野プレイス, 東京
2023 第1回福岡アートアワード受賞作品展, 福岡市美術館, 福岡
2022 Flame, OTA fine arts, 東京
2020 When many pass one way…, OTA fine arts, 上海
2020 LOOKING FOR ANOTHER FAMILY 2020 Asia Project, Museum of Modern and Contemporary Art (MMCA) ,ソウル 2019 パレードへようこそ, OTA fine arts, 東京
2019 VOCA展2019 現代美術の展望─新しい平⾯の作家たち, 上野の森美術館, 東京
2018 Geopolitical Grounds, OTA fine arts, シンガポール
2017 Project Hope?, Post Territory Ujeongguk, ソウル
助成対象活動名
「大村焼」の作品および展覧会の制作
助成活動の成果
佐賀県有田町にある「まちのオフィス春陽堂」と「有田 中の原 AGITO」の二会場で個展「大村焼」を同時開催した。
「大村焼」の大村とは長崎県大村市を指す。1950年12月、「不法入国者」とされた韓国・朝鮮人を本国に強制送還するための施設である大村入国者収容所(現 大村入国管理センター)が大村市に設置された。この周辺一帯は古くから「放虎原(ほうこばる)」とも呼ばれており、「文禄・慶長の役」の際に朝鮮半島から持ち帰った虎を放った原っぱであるため、そのように言い伝えられている。
一方、大村から車で1時間くらいの距離に位置する佐賀県有田町の名品、有田焼は豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に連れて来られた朝鮮人陶工たちが始めたもので、中でも李参平は陶祖として陶山神社に祀られている。このエリアには近世から近代以降までの長いスパンを通して、朝鮮人の移動に関する話が土地に刻まれている。有田焼の歴史と韓国・朝鮮人を収容した不自由、朝鮮半島と日本の「境界」、そして韓国軍に徴兵されるかもしれないという私の経験を「絵付け」して制作したのが大村焼である。
個展では主に陶磁器と絵画を発表した。陶磁器は有田町に約三ヶ月滞在し、窯元や地域の方に協力を仰ぎ制作をした。初めての作陶に慣れない点は多かったが、自身の絵画制作と技法や工程がさほど大きく違わないことに気が付いた。細かい違いは当然あるけれど、型や転写、塗装そして乾燥時間を利用して効率的に違う作業をすることなど類似点が多かった。有田焼における分業制導入と工業化には色んな背景があるが、自分の作業も常に工業と隣り合わせだと学びを得た。
また、展覧会に⾄るまで、たくさんの陶磁器を見たり、型屋や陶土屋などを訪ねたりすることで、焼きものに対する解像度が上がり、それが作品に反映された。絵画制作では、今までとは違った作風を展開したことも一つの挑戦であった。これまではシルクスクリーンを使用したフラットな手つきで制作してきたが、今回は今までのスタイルを引き継ぎながらも、筆を使い筆致を意識することで新しい表現の可能性を感じることができた。
個展を行った二会場とも有田内山伝統的建造物群保存地区に位置するので、来場者にはこの場所で行う意味やコンテクストの重層性を感じて頂けただろうし、短い会期ではあったが反応も常々好評だった。会期中に行ったトークイベントはオンラインでも配信をして、会場と合わせて300人近くの方が視聴してくださった。
対象作品展示情報
チョン・ユギョン「大村焼」
開催期間 | 2024/02/09(金)〜02/12(月) 11:00 〜18:00 |
---|---|
会場 | 第一会場:まちのオフィス春陽堂 第二会場:有田中の原 AGITO 二階 |