RESULT REPORT
2018年 第2回現代芸術助成津田 道子
振付するインスタレーションの制作
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津田 道子 TSUDA Michiko
1980年 神奈川県生まれ 2013年 東京藝術大学大学院映像研究科博士後期課程映像メディア学専攻修了 2019年 ACCのグランティとしてニューヨークに滞在
映像の特性にもとづいたインスタレーション作品を中心に、パフォーマーとの共同作業などを通した作品制作を行う。近年は、神村恵とのユニット「乳歯」としてパフォーマンスも行う。
助成対象活動名
歩くことの条件
助成活動の成果
今回の活動では、2017年から継続している、複数のスクリーンに等身大の人物像を投影するインスタレーション形式の作品を展開し「歩くことの条件」というタイトルで、愛知県豊田市で開催されたあいちトリエンナーレ地域展開事業「WindshieldTime わたしたちのフロントガラスから」にて発表した。空間に配置された映像の中に映る人物の動きや言葉を辿るうちに鑑賞者の「動き」に対する集中力が高まり、他の鑑賞者が出演者のようにも見え、鑑賞者自身もパフォーマーであるかのような体験を作るものである。
美術作品の鑑賞は、ゆっくり歩き回ることが付きまといます。作品から作品の間を移動して、作品の前でしばらく佇んでまた歩き始め、次の作品へ移動します。時には、キャプションや解説をじっくり読んで作品を見ることもあるでしょう。目的がある場合もあれば、新たな発見をすることもあります。それらの横方向のさまよいを「振り付け」と捉えて、鑑賞者の動きを作品に取り入れられたらと、「振り付けするインスタレーション」と呼んで、新作のための実験を始めました。試作や関連する民俗学のリサーチを進めるうちに、「横方向にうろうろさまよう」ことは、「舞」につながったと言われていることを知り、様々なモードの「歩くこと」について焦点を当てました。
展示会場には、ドアよりも少し大きなサイズの二つの両面鏡、三つの空枠、二つのスクリーンがそれぞれ複雑に映り込み合う関係で配置され、少し離れたスクリーンでは、作者による上映の前説のような以下の解説が流れます。
『昔々「舞」と同義語の「もとほり」という古い言葉がありました。
目的がなくうろうろさまよったり、目的を探して横方向に移動をする無意識の旋回運動から「舞」が生まれたということのようです。
「舞」は言葉が先にあって、動きが後から生まれた神を招く状態だとも言われています。
いろいろなことが言われていますが展覧会といううろうろ作品を探しながら歩き回るような行動は「舞」なのかもしれません。
言葉から発生した横方向の運動から、神を招く動きを探ります』
二つのスクリーンには、ダンサー・振付家の福留麻里さんとの制作プロセスの中で出てきた、歩く、移動するなどのいくつかのモードのほぼ等身大の再演映像が言葉と共に流れます。鑑賞者は、その間を自由に歩き回る中で、自分の横方向の移動について意識を向けるきっかけになります。
今回の助成はインスタレーションの制作に関わる実験と展示に向けて使わせていただいた。特に出演いただいたダンサーの福留麻里さんとの事前のやりとりが非常に重要で、言葉の選択や身体の捉え方の探索のための稽古に多くを費やせた。通常の作品制作では、作品の実費として換算しづらい経費に十分費用を当てられたことは、作品の深みにつながったと振り返っている。今回は、最終的に作家自身も出演して、「歩くこと」を「舞」とつなげて捉えた前説をして、展覧会の鑑賞をする際の歩くことともつなげて、視覚的、体験的だけでなく言葉によっても鑑賞者の行動を振付と捉えて、鑑賞をパフォーマンスに近づける試みをした。また、記録映像(編集中)の制作も助成によって十分な機材を借りて実現できた。
対象作品展示情報
あいちトリエンナーレ地域展開事業
Windshield Time – わたしのフロントガラスから
公式サイトhttp://aichi-art.com/contemporary-art/index.html
開催期間 | 2019/1/19(土)~2019/2/11(月) 10:00~17:00 |
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会場 | 西町会館 愛知県豊田市西町2丁目28番地[地図] |