RESULT REPORT
2017年 第1回現代芸術助成岡 知代
漆の透過性を生かした重層的な表面を空間との関わりとを意識した立体表現へと展開するための作品制作
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岡 知代 OKA Tomoyo
1986年 山口県生まれ 2009年 金沢美術工芸大学工芸科卒業 2011年 金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科修了 2015年 金沢美術工芸大学大学院博士後期課程美術工芸研究科工芸領域漆芸分野修了 学位 博士(芸術)取得 2015年〜 秋田公立美術大学附属高等学院 木材工芸コース 常勤講師 勤務
助成対象活動名
漆の透過性を生かした重層的な表面を空間との関わりとを意識した立体表現へと展開するための作品制作
漆という素材がもつおもしろさは、とても強い力を発している。そもそも漆は、樹から採った際は乳白色で、精製し飴色透明な液体になる。温度と湿度で硬化し、その有色透明な膜は時間と共に透明性を増していく。 漆には様々な魅力があるが、私は漆の透過性に着目し、感覚として奥に沈んでいくだけではなく、層を積層させ、実際に奥行きをつくり表面を形成する。
一見暗く何もないように見える重層された漆の塗面は、光の加減によってまったく違う表情を見せ、光があたり、奥へと透過していくことで、何層にも塗り重ねた漆の下に内包された世界が姿を現す。そんな漆表面の魅力は自然物の捉え方と重なる。私は自然界のもの、葉や木、花、川などを見た時に、目に見えるものよりも、その内側にある細胞や微生物の動き、感覚的に感じる奥に蠢く何か、それら目には見えないがあるだろう世界に強く惹かれ、そんな世界の存在を見ようとする。一見何も無いような自然物の内側に広がる世界での微細で感覚的なイメージを、漆表面を通して追い求めている。
【作品】
「透過―苔01―」 漆、銀粉、麻布、木 50×40×15(㎝)
「透過―苔02―」 漆、銀粉、麻布、木 50×40×15(㎝)
「透過―苔03―」 漆、銀粉、麻布、木 50×40×15(㎝)
「透過―枝01―」 漆、エルジー粉、麻布、木 3×60×8(㎝)
「透過―枝02―」 漆、エルジー粉、麻布、木 3×60×8(㎝)
「透過―枝03―」 漆、エルジー粉、麻布、木 3×60×8(㎝)
「透過―枝04―」 漆、麻布、木 3×120×25(㎝)
(写真撮影:加藤 健)
助成活動の成果
今回の作品では、重層された漆表面を立体作品として表現した。作品は展示空間の中で、今まで以上に多彩な表情を見せ、人の動きによる視点の変化や、光の角度の変化で、より奥深くへ沈んでいくような怪しく蠢めく世界を感じさせた。
また、床置きの立体作品はこれまでの自分の作品とは異なるおもしろさがあった。先に述べたような、より複雑な表面の見え方と共に、それ自体が展示空間の中で独立した存在としてあったように感じた。壁面の平面作品より、より空間と密接に関わることで多彩な変化を見せていたのだが、作品自体は空間と切り離れた存在のように感じたのは、不思議な感覚であった。そして、滑らかで軽いように感じたり、石でできているような重さを感じたりと、質量や質感の感じ方が見る人によって様々であったのも、おもしろい気付きであった。
対象作品展示情報
画廊からの発言 新世代への視点2019
岡知代展「漆表面Ⅳ ―その奥にあるもの―」
公式サイトhttps://g-tokyohumanite.com/exhibitions/2019/0722.html
開催期間 | 2019/7/22(月)〜2019/8/3(土) 10:30〜19:00(最終日17:00) |
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休館日 | 日曜日 |
会場 | ギャルリー東京ユマニテ 東京都中央区京橋3-5-3 京栄ビル1F [地図] |
受賞歴
2009年 | 日本漆工奨学賞 受賞 |
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2012年 | 「国際漆展・石川2012」 入選 |
2015年 | 「KANABI クリエイティブ賞2014 個展・グループ展・論文発表の部」学長賞 「KANABI クリエイティブ賞2014 卒業・修了制作部門」学長賞 |
主な展示会(個展)
2012年 | 「岡知代 漆展」 GALLERYアルトラ、石川 |
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2013年 | 「漆表面―表層と内面世界―」 ギャルリー東京ユマニテbis、東京 |
2014年 | humanité lab vol. 50 「漆表面Ⅱ ―その奥に内包された世界―」 ギャルリー東京ユマニテlab、東京 |
2017年 | humanité lab vol. 58 「漆表面Ⅲ ―命の煌めき―」 ギャルリー東京ユマニテlab、東京 |
2019年 | 画廊からの発言 新世代への視点2019 岡知代展「漆表面Ⅳ―その奥にあるもの―」 ギャルリー東京ユマニテ、東京 |
主な展示会(グループ展)
2006年 | 国民文化祭やまぐち子供夢プロジェクト「休校美術館」 山口 |
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2009年 | 「第52回卒業制作展」 金沢21世紀美術館(市民ギャラリー)、石川 「生新の時2009 若者たちの漆芸」 石川県輪島漆芸美術館、石川 |
2010年 | 「金沢燈涼会 浅野川工芸回廊」 石川 |
2011年 | 「第31回 大学院修士課程修了制作展」 金沢21世紀美術館(市民ギャラリー)、石川 「漆芸の未来を拓く―生新の時2011」 石川県輪島漆芸美術館、石川 「漆展―新しい漆のかたち―」 伊丹工芸センター、兵庫 |
2012年 | 「会津・漆の芸術祭2012 ~地の記憶 未来へ~」 金沢美術工芸大学大和川酒蔵良志久庵プロジェクトチーム、福島 |
2013年 | 金沢美術工芸大学博士後期課程研究制作展「起動/プロセス」 金沢美術工芸大学アートギャラリー、石川 「かなざわ燈涼会2013 浅野川工芸回路」 石川 「2013湖北国際漆芸三年展 大漆世界 源・流」 湖北美術館、中国 エマージング・ディレクターズ・アートフェア 「ウルトラ006」 スパイラルガーデン、東京 「常設展 加納光於 | 野田裕示 | 額田宣彦 | 富田菜摘 | 向山 裕 | 岡 知代 他」ギャルリー東京ユマニテ、東京 |
2015年 | 第16回 大学院博士後期課程研究作品展」 金沢21世紀美術館(市民ギャラリー)、石川 「生新の時2015 漆芸の未来を拓く」 石川県輪島漆芸美術館、石川 「Japan spirit ×15 ~URUSHI~」 ORIE ART GALLERY、東京 「安曇野市制施行10周年記念企画展 うるしのみらい~髙橋節郎に続く人々~」 安曇野髙橋節郎記念美術館、長野 「急がば廻れ」展 秋田市中心市街、秋田 |
2016年 | 「方法の発露2016 –地域性と個人性-」 しいのき迎賓館、石川 |
2018年 | 「漆の現在2018展」 日本橋三越本店、東京 |
2019年 | 「漆表現の現在vol.2」 日本橋髙島屋、東京 |