RESULT REPORT
2022年 第6回現代芸術助成吉田山
自己修復する野外公共彫刻プロジェクト
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吉田山 Yoshida Yamar
公式サイトhttps://floatingalps.com/
熱海と東京都内を拠点とするArt Amplifier。
都市と山村の生活経験やその地の歴史を素材とし、都市のインフラや場所をオブジェクトとして再利用する思索を元に展覧会キュレーション/アートプロジェクト実践/出版/経営を試みつつ、社会のオルタナティブな関係性を実践する。
近年の主なプロジェクト
『都市GENEの抽出・反転・流通』(BankART Station,横浜,2024)、『MALOU A-F』(やんばるアートフェスティバル,沖縄,2024)、『自己修復する野外公共彫刻プロジェクト』(MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館,奈良,2023)
、以下キュレーションとして『URBAN GAZE』(APRDELESP,CDMX,2024)、『AUGMENTED SITUATION D』(CCBT 渋谷駅周辺,東京,2023)『風の目たち』(ジョージア&トルコ,2022-)、『のけもの』(アーツ千代田3331屋上,東京,2021)、『インストールメンツ』 (投函形式,住所不定,2020)等。
ART SITE神津島2024 共同ディレクター
ATAMI ART RESIDENCE プログラムディレクター2023年より継続中
CCBT 2022年度アーティストフェロー
助成対象活動名
自己修復する野外公共彫刻プロジェクト
助成活動の成果
自己修復する野外公共彫刻プロジェクト「Metabolizing Form」は、現代美術における新たな表現手法としての自己修復彫刻の可能性を探求するプロジェクトである。本プロジェクトの第一弾は、奈良県下北山村の吉野熊野国立公園内において実施され、伝統的な彫刻の概念を超えた、自然との共生を模索する試みでもあった。本プロジェクトでは、自己修復機能を持つモルタルを用いて制作された彫刻作品が、時間経過とともに自然環境との相互作用によってどのように変化していくかを検証した。特に、コンクリートを食害するダンゴムシを誘引するために、鰹節などの有機物を添加することで、生物学的要因による作品の変化を加速させた。
3ヶ月の限定設置ということで自己修復彫刻の可能性を調査するためにモルタルの自己修復機能と、生物による摂食活動が組み合わさることで、従来の彫刻作品とは異なる、動的な変化を伴う方法のプロトタイプの展開をすることになった。自然との共生として、この小さいコンクリート彫刻は、下北山村にある巨大ダムという一時期村に活気をつくるきっかけとなった土木工事のメタファーとしても考えることができるという解釈もあたえた。そして、人工物である彫刻作品が、自然環境に積極的に働きかけ、生態系の一部として機能する可能性を示唆する。
そして、この彫刻作品が、人間の寿命をはるかに超える時間スケールで存在し、その間に絶えず変化し続けることで、時間の概念を新たな視点から捉え直す契機となることを狙う。
本プロジェクトは、現代美術における素材と自然との関係性、および芸術作品と時間の関係性に関する新たな視点を提示するものとなることを願う。今後、より長期的な観測と、多様な生物種との相互作用に関する研究を深めることで、自己修復彫刻の可能性をさらに広げていくことを考えたい。
対象作品展示情報
MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館 2023
公式サイトhttps://mindtrail.okuyamato.jp/
開催期間 | 2023/09/16(土)〜11/12(日) |
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会場 | 奈良県 吉野町、下市町、下北山村 |