公益財団法人 アイスタイル芸術スポーツ振興財団

RESULT REPORT

2018年 第2回現代芸術助成小森はるか+瀬尾夏美

二重のまち/交代地のうたを編む

  • 小森はるか+瀬尾夏美

    公式サイトhttp://komori-seo.main.jp/

    映像作家の小森と画家で作家の瀬尾によるアートユニット。2011年3月、ともに東北沿岸へボランティアに行ったことをきっかけにして活動開始。2012年より3年間、岩手県陸前高田市に暮らしながら制作に取り組む。2015年、東北で活動する仲間とともに、土地と協働しながら記録をつくる組織、一般社団法人NOOK(のおく)を設立し、仙台に拠点を移す。現在も、風景と人びとのことばの記録を軸に制作・発表を続けながら、対話の場の企画と運営も行っている。

    小森はるか Haruka KOMORI

    映像作家。1989年静岡県生まれ。
    東京芸術大学美術学部先端芸術表現科卒業、同大学院修士課程修了。映画美学校フィクションコース初等科修了。

    瀬尾夏美 Natsumi SEO

    画家、作家。1988年東京生まれ。
    東京芸術大学美術学部先端芸術表現科卒業、同大学院修士課程油画専攻修了。

助成対象活動名

二重のまち/交代地のうたを編む

2018年 第2回現代芸術助成 小森はるか+瀬尾夏美「二重のまち/交代地のうたを編む」
滞在ワークショップ・映像作品制作 実施場所:陸前高田市内時期: 2018/9/1(土)〜15(土)
2018年 第2回現代芸術助成 小森はるか+瀬尾夏美「二重のまち/交代地のうたを編む」
2018年 第2回現代芸術助成 小森はるか+瀬尾夏美「二重のまち/交代地のうたを編む」
滞在ワークショップ・映像作品制作 実施場所:陸前高田市内時期: 2018/9/1(土)〜15(土)
2018年 第2回現代芸術助成 小森はるか+瀬尾夏美「二重のまち/交代地のうたを編む」
2018年 第2回現代芸術助成 小森はるか+瀬尾夏美「二重のまち/交代地のうたを編む」
滞在ワークショップ・映像作品制作 実施場所:陸前高田市内時期: 2018/9/1(土)〜15(土)
2018年 第2回現代芸術助成 小森はるか+瀬尾夏美「二重のまち/交代地のうたを編む」
2018年 第2回現代芸術助成 小森はるか+瀬尾夏美「二重のまち/交代地のうたを編む」
滞在ワークショップ・映像作品制作 実施場所:陸前高田市内時期: 2018/9/1(土)〜15(土)
2018年 第2回現代芸術助成 小森はるか+瀬尾夏美「二重のまち/交代地のうたを編む」
2018年 第2回現代芸術助成 小森はるか+瀬尾夏美「二重のまち/交代地のうたを編む」
ほぼ8年の間に制作した作品群一挙公開!と、新作「二重のまち/交代地のうたを編む(仮)」の上映会
2018年 第2回現代芸術助成 小森はるか+瀬尾夏美「二重のまち/交代地のうたを編む」
2018年 第2回現代芸術助成 小森はるか+瀬尾夏美「二重のまち/交代地のうたを編む」
瀬尾夏美個展「あわいゆくころ」開催期間:2019/1/11(金)〜2/11(月・祝)会場:東北リサーチとアートセンター(TRAC)
2018年 第2回現代芸術助成 小森はるか+瀬尾夏美「二重のまち/交代地のうたを編む」
2018年 第2回現代芸術助成 小森はるか+瀬尾夏美「二重のまち/交代地のうたを編む」
瀬尾夏美個展「風景から歌」開催期間:2019/1/29(火) 〜2/10(日)実施場所:Gallery TURNAROUND
2018年 第2回現代芸術助成 小森はるか+瀬尾夏美「二重のまち/交代地のうたを編む」

助成活動の成果

陸前高田の住民の方々から、震災との距離を感じていた 4人の出演者=”旅人”たちが話を聞くことを通じて、当事者性の濃淡に関わらないそれぞれの立場をあらためて尊重しあえる”継承の場”をつくることを、15日間の滞在制作で試みた。出演者が聞き手となることによって、日常生活では聞こえなくなっていた震災直後の経験や震災以前の記憶、そして現在復興過程にある街への思いが語られ、震災から8年目にしてはじめて耳にする話も少なくなかった。その語りが映像記録として残されるということ自体にも成果があったと捉えている。また被災された方の心情を安易に理解することへの葛藤を抱えた若者たちの姿に対して、陸前高田の方々が共感する場面も多くあった。被災地域の中でも当事者性の濃淡があり、語れないことや理解できないことがあるという事実に、出演者たちが誰かの経験を「語り直す」という立場を引き受けようとする手掛かりを見出していたように感じている。同時並行に続けてきた『二重のまち』の朗読は、話を聞き、街を歩き、語り直しをする経験を糧とし、読み手にとって『二重のまち』がどういう物語であるのか、どの視点から物語を読むのか、という立ち位置を出演者自身が明確にしていくことへと繋がり、朗読する声にも変化が現れた。

また、一連のプロセスを記録した映像作品の上映(2/3 仙台市内)では、来場者の感想より、マスメディアのように事実だけが伝聞されるのではなく、出演者の表情や声が当事者の語りのように憑依して映る瞬間や、出演者自身が言葉を詰まらせたり、語れなさが身体に現れるときに、当事者から直接話を聞く以上に伝わるものがある、”継承”の可能性があるという意見が聞かれた。その視点を来場者の多くの方達と共有できたことに、「それぞれの立場を尊重し合える”継承の場”」としてのプロジェクトの成果を感じている。

<上映会アンケートより抜粋>

  • 震災を体験した人物の視点で描かれるのではなく、その話を聴いた他者によって語られる記憶、という描き方が新鮮でした。(中略)パフォーマーの方が体験していない出来事を話す姿よりも、現地の人と過ごして対話から生まれた感情や、思考が、人間としての葛藤を感じてわたしはすごく好きでした。一人一人が誰かの記憶を紡ごうとする姿がすごく美しいと感じました。(10代女性)
  • 出演者の方々の小さな表情の変化がわかる素敵な映像でした。相手を思うやさしい気持ちがすごく伝わってきました。(20代男性)
  • 四人の若者たちが、全神経を集中させて目の前のその人の話をしっかり聞こうとする態度、そこで見たもの、聞いたことを感じて、しっかり向き合おうとする姿勢に、普段自分はいかにものを見過ごし、スーっと流しているかについても気づかされました。(40代女性)
  • 語りによって沈黙がより引き立つというか、語れなさが引き立つというか、演者さんにとっても、わたしたち観客にとっても、語りという音を発する行為が、同時にとても耳をすます行為のように思えてならなかったです。素晴らしかったです。(40代男性)
  • ニつ、続けて観られてよかった(波のした〜、交代地)。近しい人から話を聞いているような気付きはたくさんありましたが、言葉や感覚が体に入ってくるような、無意識下に働きかけられて影響を受けているのではと映画をみながら思いました。面白かったです。(20代女性)

同時期に開催された瀬尾夏美個展「あわいゆくころ」(東北リサーチとアートセンター)、「風景から歌」(Gallery TURNAROUND)では、瀬尾の単著「あわいゆくころー陸前高田、震災後を生きる」が出版され、市内外から注目を集めた。2011年から小森+瀬尾が制作してきた映像作品の上映と合わせて鑑賞された方が多く、8年の時間経過とともに移ろう街や人々の心の変化を、作品の持つ記録性によって鑑賞者自身が追想する場として、展覧会や上映会が機能しているという実感があった。

<滞在ワークショップ・映像作品制作>

公募にて選出した出演者4名とともに陸前高田市内で2週問滞在し、出演者の声や身体を介して表現される『二重 のまち』と、住民から聞いた話を彼らが語り直そうとする継承の試みを追った記録から、中編の映像作品「二重のまち/交代地のうたを編む」を制作した。
実施場所:陸前高田市内
実施時期: 2018/9/1(土)〜15(土)

<上映会と展覧会>

「小森はるか+瀬尾夏美ほぼ8年感謝祭」と題し、上記の映像作品および、2011年以降陸前高田を舞台とし、被災からの時間経過に沿って小森はるか+瀬尾夏美が制作してきた映像作品の上映を2日間に渡ってせんだいメディアテークにて行った。また「二重のまち/交代地のうたを編む」上映後には、映画監督の濱口竜介氏、演劇作家・小説家の岡田利規氏をゲストに迎え、「テキストを発話すること」についてのレクチャーとトークイベントを実施。同時期に『二重のまち』が制作されるまでに制作した瀬尾夏美の絵画、テキスト作品を展示し、『二重のまち』がつくられる過程や、『二重のまち』を引用して制作していく最新作「二重のまち/交代地のうたを編む」等について、仙台市内で周知するための展買会を行った。

対象作品展示情報

ほぼ8年の間に制作した作品群一挙公開!と、新作「二重のまち/交代地のうたを編む(仮)」の上映会

開催期間  2019/2/2(土)〜2019/2/3(日)
会場 せんだいメディアテーク7階スタジオシアター 仙台市青葉区春日町2-1
入場料 1回券1,000円、交代地上映券2,000円、2日間通し券3,000円

瀬尾夏美個展「あわいゆくころ」

開催期間 2019/1/11(金)〜2019/2/11(月・祝)
休館日 月~木曜日
会場 東北リサーチとアートセンター(TRAC)
宮城県仙台市青葉区大町2丁目3−22
入場料 無料

瀬尾夏美個展「風景から歌」

開催期間 2019/1/29(火)〜2019/2/10(日)
休館日 月曜日
会場 Gallery TURNAROUND
宮城県仙台市青葉区大手町6−22 久光ビル1階
入場料 無料

「二重のまち/交代地のうたを編む」上映会&トークイベント

公式サイトhttp://hajimari-ac.com/enjoy/event/koutaichi-event.php

開催期間 2019/6/22(土) 17:00~20:00[要予約]
会場 はじまりの美術館
福島県耶麻郡猪苗代町新町4873 
入場料 1500 円(企画展観覧料含む)

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