公益財団法人 アイスタイル芸術文化振興財団

RESULT REPORT

2025年 第9回現代芸術助成中谷 優希

石原吉郎の詩を元に、態度価値について考察したパフォーマンス映像《沈黙を観測すること》の制作

  • 中谷 優希 Yuki Nakaya

    1996年北海道生まれ。東京藝術大学美術学部卒業。ケアや暴力などを主題とし、静的な絵画のモチーフを動的な体に移すことで時間を駆動させ、画面に固定されたモチーフの持つ意味を更新していく作品を制作。また、制作と鑑賞の「環境」やアクセシビリティについて探究・実践を行なっている。

    主な活動
    2026 「ARTISTS’ FAIR KYOTO 2026」(京都国立博物館 明治古都館)
    2025 アートノト アクセシビリティ講座2025「創造活動におけるアクセシビリティとは(後編)」
    2024 Co-programカテゴリーA「庭の話し」(京都芸術センター)
    2023 「Here comes everybody!」(秋田市文化創造館)
    2023 個展「ふわふわの毛をむしる」(助成:公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京スタートアップ助成・OGU MAG +)
    2022 「第1回 MIMOCA EYE/ミモカアイ」準大賞(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)
    2021 「Stilllive:Performance Art Summit Tokyo 2021-2022──衛生・変身・歓待」(ゲーテ・インスティトゥート東京)

    2021 「群馬青年ビエンナーレ2021」奨励賞(群馬県立近代美術館)
    2021 「居場所はどこにある?」(東京藝術大学大学美術館陳列館)

助成対象活動名

石原吉郎の詩を元に、態度価値について考察したパフォーマンス映像《沈黙を観測すること》の制作

 
 
 
 
 
 
 

助成活動の成果

シベリア抑留を経験した詩人・石原吉郎の詩や散文から、自身が感じた新たな回復のモデルケース「沈黙の中の態度を観測し、承認の方法と側面を変えること」をパフォーマンスの映像として制作しました。

本助成により、出演者や撮影スタッフなど、作家単独では困難だった多人数での制作体制が可能となり、結果として30分程度の新作映像を制作することができました。これにより、石原吉郎の詩『位置』から着想したイメージに妥協することなく、天候や潮汐の影響を受けやすく、安全管理や機材運用が難しい海という環境下においても、パフォーマンス映像の制作を行うことができました。

また本助成をいただいたことで、多人数での制作においても制作環境を整えることに注力できた点は、作品の強度に大きな影響を与えました。適切な謝礼の支払いや十分な稽古・撮影・編集時間を確保できたことで、出演者を消費してしまうような一方的な演出に陥ることなく、一人ひとりの解釈や身体感覚を作品に編み込んでいくための対話の場を築くことが可能となりました。

具体的には、稽古時間内にクリエイション環境やプロセスに対するフィードバックの時間を設けたほか、アクセスライダー(様々なニーズを持つ表現者が安心して創作に関わるための配慮をまとめた要望書)の制作、個々人の体調や生活に合わせた稽古時間の調整、1on1の実施などを行いました。

このように制作プロセスを重視した結果、座組み内の心理的安全性が高まり、相互受容のあるコミュニケーションが活発化しました。結果として、石原の詩やフランクルが提唱する「態度価値」、自身が考える承認の更新や沈黙の観測などの、抽象的な概念を座組み全体で深く共有することができ、それが本作の出演者の姿勢にも十分に現れていると感じています。

本作は作家としての重要な代表作となると共に、制作プロセス自体が、自身の回復において不可欠な時間となりました。そして本作が、私と同じような状況に追い込まれた方々にも届く作品となったことを実感しています。

これは助成金によって、金銭的・時間的・精神的な余裕が生まれたからこそ到達できた重要な成果であると感じています。本プロジェクトを支えてくださったことに深く感謝申し上げます。助成いただきありがとうございました。

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