公益財団法人 アイスタイル芸術文化振興財団

RESULT REPORT

2025年 第9回現代芸術助成鈴木 悠哉

福島県立美術館における企画展「福島アートアニュアル2025」における新作インスタレーション作品の制作

  • 鈴木 悠哉  Yuya Suzuki

    公式サイト https://www.yuyasuzuki.com/

    福島県生まれ。現在札幌を拠点に活動。都市を集合的無意識の集積と捉え、都市風景の断片から独自に記号的なイメージを抽出し、ドローイング、ペインティング、立体、映像など様々なメディアに転換、インスタレーションという形態を通じて現実世界を独自の視点でシミュレーションする。主な展覧会に、「The 25-Hour Days」(基隆美術館/2024)、「Archaic Future」(モエレ沼公園/2023)、「Post Language Realm」(クンストラーハウス・ベタニエン/2021) など。2020年、文化庁新進芸術家海外研修制度にてドイツ(ベルリン)に滞在。

助成対象活動名

福島県立美術館における企画展「福島アートアニュアル2025」における新作インスタレーション作品の制作

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

助成活動の成果

私は今回の助成を受け、福島県立美術館での企画展、福島アートアニュアル2025「site—representation」において、展示室全体を使用した大規模なインスタレーション作品の展示を行うことができました。特に今回のインスタレーションは、「都市における集合的な無意識」を軸としながら、4つの大きなセクション(作品シリーズ)がひとつのインスタレーション空間の中に並置され、それぞれのセクションが緩やかに呼応するような形態となっており、これまでの私のインスタレーションの作り方とはまた異なる新しい試みとなりました。その中でも特に、現地の市民の方々とのワークショップを通じて制作した作品をインスタレーション空間に組み込むことができたのは、私の今後の制作にとっても大きな成果となったと感じています。ワークショップにおいて参加者が作り上げる作品の形態とは、私の想定や、コントロールの外側にあるものです。そういった自分がコントロールできないもの、イレギュラーや偶然性を孕むものとは、私の作品のなかで、「自然」を代替する要素であったと感じます。美術館があるその土地に住む人間を通して生み出された「自然」は、私が様々な都市を歩く中で生まれてきた人為的な形態(作品)に対峙し、また統合される要素として、インスタレーション空間において機能していたと感じます。
 また、展示会場の中央部には、福島市内の「空き地」を8mmフィルムで撮影した映像と共に、鑑賞者が座ることができる台座を設置。都市と自然との間、また公共空間と住宅の間で形成される都市の隙間のような場所が、植物や生物、モノなどの避難所となっているという「第三風景」(ジル・クレマン)のコンセプトと照らし合わせながら、美術館内に新たな「空き地」のシミュレーションを作り上げました。作品が、鑑賞者の経験や、彼らが暮らす地域と緩やかに結びつき、開かれていく作品のあり方を今回の展示において作り上げることができたように感じています。
 また、今回展示を行ったことで、福島市や、福島県の他の町から作品を見にきてくださったアートコミュニティの方々と交流する機会を持つことができ、自分の地元である福島でそういった今後の活動につながっていく結びつきを持てたことも今回大きな成果であったと感じています。

対象作品展示情報

福島アートアニュアル2025 「site-representation」

展示会サイトhttps://art-museum.fcs.ed.jp/exhibition/schedule

開催期間 2025年6月7日 (土)〜 6月29日 (日)
会場 福島県立美術館

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