公益財団法人 アイスタイル芸術文化振興財団

RESULT REPORT

2025年 第9回現代芸術助成林田 真季

日本の不法投棄をテーマとするシリーズ〈Beyond the Mountains〉より、写真を用いた新作インスタレーションの展覧会開催

  • 林田 真季 Maki Hayashida

    公式サイト https://www.makihayashida.com

    1984年生まれ、兵庫県出身。東京を拠点に活動するビジュアル・アーティスト。人間の消費活動にまつわる社会的課題をリサーチし、さまざまな技法を用いた写真作品や、主に写真を媒体とするインスタレーションを通じて可視化する。同時に、写真を消費財として捉えることで、環境との相反する関係にも目を向け、デジタル時代における写真メディアの物質性や複製性を問いかけている。

    2007年関西学院大学総合政策学部卒業。2023年ロンドン芸術大学ロンドン・カレッジ・オブ・コミュニケーション MA Photography 修了。主な受賞歴に、「アルル国際写真フェスティバル LUMA Rencontres Dummy Book Award」ファイナリスト(2023年)、「シンガポール国際写真フェスティバル Dummy Book Award」グランプリ(2020年)など。主な展覧会に、「Silent Echoes of the Cedar」(hakari contemporary、京都、2025年)、「第17回 shiseido art egg 」(資生堂ギャラリー、東京、2024年)、「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭『KG+SELECT』」(三条両替町ビル、京都、2021年)などがある。

助成対象活動名

日本の不法投棄をテーマとするシリーズ〈Beyond the Mountains〉より、写真を用いた新作インスタレーションの展覧会開催

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

助成活動の成果

RPS京都分室パプロルにて、キュレーター後藤由美氏のもと、写真家/ビジュアルアーティストの千賀健史氏との二人展「after all」を開催した。これは、日本における産業廃棄物の不法投棄と特殊詐欺という、一見無関係に見える二つの社会問題が、どのように交差し、変遷してきたのかを浮かび上がらせる試みで、最終的には両者が同じ構造的な問題に行き着くことを示そうとした。

私は不法投棄に関するリサーチを通じて、環境の変化が社会に与える影響を探り、千賀氏は特殊詐欺をテーマに、裏社会が収益源を変えながら継続していく構造に焦点を当てた。これらを通して社会の深層にある構造を明らかにするとともに、私たちの行動が無意識のうちに裏社会を支えてはいないかという問いを投げかける展覧会となるよう、打ち合わせを重ねて初期段階から共同で企画を進めていった。その結果、二人の作品を単に並置するのではなく、町家を改装した特異な展示空間を活かした共同インスタレーションという形で発表するに至った。

私のシリーズ〈Beyond the Mountains〉は、2020年から2024年にかけて取り組んだビジュアル・アーカイブ・プロジェクトである。2023年3月31日に失効した「産業廃棄物特別措置法」の特定支障除去事業の対象となった大規模事案を中心に、1990〜2000年代に全国で多発した不法投棄とその関連事象を記録している。ただし、今回の展示で焦点を当てたのはこのうち後者の関連事象であり、シリーズ全体のごく一部である。まさにこれが、今回の展示における私の企画意図であった。他のアーティストとコラボレーションし、完成済の写真作品群に対して新たな「見せ方」を構想・実施するという目的を、本展示において実現することができた。

なお本展は、京都国際写真祭「KYOTOGRAPHIE」のサテライトプログラム「KG+」の一環として開催され、「KG+ DISCOVERY Award 2025」のファイナリストにも選出された。さらに、京都新聞(4月19日朝刊「美術」欄)や、ARTnews Japanの「今週末に見たいアートイベントTOP5:5月9日号」などにも取り上げられた。

対象作品展示情報

「After all」

展示会サイトhttps://kgplus.kyotographie.jp/exhibitions/2025/kenji-chiga-maki-hayashida/

開催期間 2025年4月12日(土) 〜 5月11日(日)
会場 RPS京都分室パプロル

活動報告一覧へ戻る