公益財団法人 アイスタイル芸術文化振興財団

RESULT REPORT

2024年 第8回現代芸術助成斎藤 英理

映像作品《CC: Everyone, Yet No One》の制作

  • 斎藤 英理 Eri Saito

    公式サイト https://www.erisaito.info

    福島県生まれ、現在は東京都を拠点に活動。記憶や認識といった、目に見えない不確な動態をモチーフに、主に映像メディアを用いて作品を制作している。表層的な言葉や分類ではとらえきれない、自分のなかにある揺らぎや曖昧さに向き合いながら、そこに浮かび上がる気配や記憶を、映像を通してそっと留めるような表現を探っている。

    主なグループ展
    2025 「煙が消えるその前に」横浜市民ギャラリー(神奈川)
    2025 「恵比寿映像祭2025 Docs―これはイメージです―」東京都写真美術館(東京)
    2025 「Artists in FAS 2024」藤沢市アートスペース(神奈川)
    2023 「how to make friends」Art Center Ongoing(東京)
    2021 「暗くなるまで待っていて」東京都美術館(東京)

    主な上映
    2025 「Images Festival」Innis Town Hall(トロント)
    2024 「北京国際短編映画祭」ゲーテ・インスティチュート・チャイナ(北京)
    2024 「21st Experimental Film & Video Festival in Seoul」韓国映像資料院(ソウル)
    2024 「Prismatic Ground」アンソロジー・フィルム・アーカイブス(ニューヨーク)
    2023 「EAST EAST_TOKYO 2023」科学技術館(東京)

    アーティスト・イン・レジデンス
    2024 Katsurao AIR(葛尾村・福島)

    受賞
    2024 e-flux Film Award, Second Prize

助成対象活動名

映像作品《CC: Everyone, Yet No One》の制作

 
 
 
 

助成活動の成果

飯嶋桃代と斎藤英理による企画展「煙が消えるその前に」にて、映像作品《CC: Everyone, Yet No One》を発表しました。本展は、戦後日本の混血児問題を出発点に、現代における「ハーフ」と呼ばれる人々に向けられるマイクロアグレッションを主題としました。飯嶋の彫刻作品と斎藤の映像作品を中心に、2人の往復書簡から生まれたドローイングやメモなどによって構成されたインスタレーションは、過去と現在をつなぎながら、忘れられたまなざしや記憶、声に耳を澄ますための試みでもありました。
映像作品《CC: Everyone, Yet No One》では、自身の出自や名前にまつわる記憶を通して、無意識的に投げかけられる言葉や視線が、いかにして個人のアイデンティティに影響を与えるのかが描かれます。作品のタイトルはメールのCC(カーボンコピー)に由来し、誰にも向けられていないのに、常に巻き込まれているような当事者の複雑な位置づけをあらわしています。
また、本作の制作に向けたリサーチの一環として、エスペラント語の講座受講や、家族との異言語間コミュニケーションの記録、さらには「第三者返答」のような外見による差別の事例を知ることができました。これらの経験を通じて、「日本人」という枠組みの中にも外見・国籍・言語・名前といった多様なレイヤーが存在し、それらが無意識の偏見と結びつく構造がより鮮明に見えてきました
制作と並行して行ったこれらのリサーチは、最終的な作品に直接反映されたわけではありませんが、自身の表現にとって本質的な問題意識を深める契機となり、今後の活動においても重要な要素になると感じています。引き続き、可視化されにくいものやその構造に目を向けながら、表現として発信していく予定です。

対象作品展示情報

「煙が消えるその前に」

開催期間 2025年04月03日(木) 〜 4月13日(日)
会場 横浜市民ギャラリー

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