RESULT REPORT
2023年 第7回現代芸術助成小鷹拓郎
朝鮮問題をテーマにしたインスタレーションの制作
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小鷹拓郎 Takuro Kotaka
公式サイトhttps://takurokotaka.net/
アーティスト、映画監督。1984年埼玉県生まれ。
社会の分断を抱えた地域でフィールドワークをおこない、ドキュメンタリーとフィクションを往来するアートフィルムを制作。
これまでアフリカ、中東、アジア諸国の紛争地帯で活動する芸術家と共同制作し、弾圧や検閲から逃れるための表現手法を探究。
問題の当事者や専門家と協働し、ユーモラスな視点で現代社会の抜け穴を模索する。
主な展覧会に北アルプス国際芸術祭、ジャカルタビエンナーレ、奥能登国際芸術祭など。
主な映画祭にドイツ・オーバーハウゼン国際短編ドキュメンタリー映画祭、インドネシア・ジョグジャNETPACアジアン映画祭などがある。
2017年度文化庁新進芸術家海外研修員、2019年度ポーラ美術振興財団在外研修員。
助成対象活動名
朝鮮問題をテーマにしたインスタレーションの制作
助成活動の成果
新潟市芸術創造村・国際青少年センターゆいぽーとで小鷹拓郎展「BORDER」展を開催した。作家は2022年に新潟市芸術創造村ゆいぽーとが主催した「招聘アーティストインレジデンスプログラム」に招かれたことがきっかけで、北朝鮮をルーツに持つ新潟在住の人々と共に朝鮮問題に関する制作に取り組んできた。今回の個展では北朝鮮をはじめとする「国境」を主題とし、分断や境界にまつわる新作の作品群を発表。会場では架空の国境を設け、鑑賞者に国境の分断を体験してもらう試みをおこなった。
2020年以降、北朝鮮では現在コロナが蔓延し、2023年時点ではどこの国からも入国することができない状況になっていた。本展「BORDER」では、作家自身がどうしても北朝鮮の国境を越えられなかった体験と、別のプロジェクトでパプアニューギニアの国境を運良く簡単に越えられた二つの実体験が基になっている。
会場全体を「架空の国境」に見立て、様々な「BORDER」をテーマにした複数の作品を会場に展示。作家は事前に24時間限定のオンラインチケット「E-VISA」を発行し、鑑賞者は事前にそれを取得してきた者と、それを持っていない者に分断され、鑑賞作品を制限されるE-VISAシステムを導入。たとえ同一の作品であってもE-VISAを所有している鑑賞者とそうでない鑑賞者によって異なる説明がおこなわれ、会場案内図も異なるものが配布された。
展示会場のLevel.1エリアでは全ての鑑賞者が閲覧を許され、Level.1とLevel.2の間は全鑑賞者が滞在できない無国家地帯、そしてLevel.2エリアはE-VISA所有者のみ立ち入りを許可された特別許可区域に設定。E-VISAを持っている鑑賞者は全ての作品を鑑賞することができたが、E-VISAを所有していない鑑賞者は、多種多様な行動を見せた。諦めてすぐ帰る人、E-VISAはないけど入れてくれと懇願する人、E-VISAを所持する人が来るまで待ち、来たらコピーしてもらう人、お金(賄賂)払って入ろうとする人、自分で偽造E-VISAを作って入ろうとする人、まわりの人の目を盗んで強行突破する人などがあらわれた。
BORDERとは一体何なのか。本展を通して、国家、領土、そして個人の在り方を鑑賞者と共に体感し、朝鮮問題やパレスチナ問題、ウクライナ戦争といった分断を考察していく仕組みを展覧会を通して構築した。
また、本展開の関連イベントとして、二つのイベントを実施。展覧会会場では作家自身が世界中の国境で録音してきた音源をもとに、新潟を拠点に活躍するノイズミュージシャンSPORE SPAWNがリミックスをしていくというパフォーマンスイベントを開催。新潟市内にある古本屋「ニュースナック四ツ目長屋」では、本展示に関するアーティストトークが開催された。
対象作品展示情報
小鷹拓郎個展「BORDER」
公式サイトhttps://www.yui-port.com/
開催期間 | 2024/3/22(金)〜3/24(日) 10:00 〜18:00 |
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会場 | 新潟市芸術創造村・国際青少年センター「ゆいぽーと」 新潟市中央区二葉町2丁目5932番地7 (旧二葉中学校)[地図] |